坂本龍馬
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内容紹介
薩長同盟の締結に奔走してこれを成就、海援隊を結成しその隊長として貿易に従事、船中八策を起草して海軍の拡張を提言……。
明治維新の立役者にして民主主義の先駆者=坂本龍馬像を決定づけた幻の長篇小説、68年ぶりの復刻!
「何(ど)うじゃ龍馬! これが断末魔の己れの胸じゃ。寅之進の精神じゃ。又貴様の云ってくれた軽格の魂じゃ」
何という冷静、何という平穏、今という今、腹一文字に掻割(かっさば)いたばかりの寅之進、鮮血は滾々(こんこん)として座に溢れ龍馬の刀の下緒は真赤に染みて居る。(中略)
「オオ、池田! 見事であるぞ! 貴様の死は決して無にはせぬ。此(この)龍馬が貴様に代り代って何をするか、草葉の蔭からよく見届けてくれ!」
「嬉しいぞ坂本!」
「貴様は死んでも軽格の魂は決して亡(ほろ)びぬぞ。是(これ)までに家中の奴原(やつばら)からうけた侮蔑凌辱、キッと思い知らしてやる時が来る。見よ、此の嶮(けわ)しい山、荒ぶる海、本統(ほんとう)の土佐人は吾々(われわれ)軽格だ。本統の土佐人が出て仕事をする時はモウ眼前に迫って居る。貴様の死は吾々軽格の惰眠を醒(さま)す暁の鐘じゃぞ」
「坂本! 有難(ありがた)い、モウ何も思い置くことはない」
坂本は池田の見る前で、その下緒をとって生々しい血を啜(すす)った。
池田はかくして逝(ゆ)いた。坂本はかくして死んでゆく池田の魂に誓った。(本書より)
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